AGA治療に使われる薬の効果・副作用と注意点
- 【記事監修】
渋谷駅前おおしま皮膚科
院長 大島 昇
皮膚科専門医(日本皮膚科学会認定)
日本医師会認定産業医
2005年 筑波大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院、三井記念病院、国立病院機構相模原病院、日本赤十字社医療センターにて皮膚科として経験を積み、2014年3月に渋谷駅前おおしま皮膚科を開業。
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AGA(男性型脱毛症)の治療は薬によって行います。これまでの薄毛対策というとシャンプーや育毛剤といったイメージがありますが、薄毛の原因がAGAであり、そのメカニズムが解明された現在は薬による治療で発毛を促すことができます。
AGA治療に使われる薬にはいくつかの種類があり、それぞれ治療の目的や効果が異なります。また、薬と聞くと副作用を心配される方もいるでしょう。
ここでは、AGA治療に使われる薬について詳しく解説します。
AGA治療薬の種類
AGAの症状は進行状況に個人差があります。AGAの薬は効果や副作用を把握した上で服用するのが基本です。
AGAの治療薬は主に以下の3つがあります。
- プロペシア
- ザガーロ
- ミノキシジル
それぞれの薬の効果や副作用について説明します。
プロペシア
AGAの薬として最も知られているものがプロペシアです。主成分はフィナステリドです。AGAの進行遅延や薄毛予防の効果があります。
効果
AGAは、テストステロンという男性ホルモンの一部がDHT(ジヒドロテストステロン)に変化し毛周期に作用することで進行します。DHTは毛周期を早める作用があり、毛周期が早まることで十分に髪の毛が成長しきれず細く短い毛が生えるようになります。
その原因となるのが5α-リダクターゼという成分であり、プロペシアはⅡ型リダクターゼを抑制する効果があるのです。
ただし、あくまでもAGAの進行遅延を目的とした薬です。
詳しくは以下の記事をご覧下さい。
副作用
AGAの症状を抑えるプロペシアは、通常の医薬品と同じ様に多少の副作用があります。臨床試験において、1%前後の人が勃起不全や性欲減退を報告したのです。
また、他の副作用として1%以下で肝機能障害や女性化乳房などがあげられています。ただし、残りの99%の人は身体の不調を訴えていません。
詳細は以下の記事をご覧ください。
注意点
プロペシアは服用する際、副作用以外の点も注意しなければなりません。
1つめは保管方法です。プロペシアは妊婦や胎児、授乳中の赤ちゃんに影響を与えるため、決して触れないところに管理すべきだと言えます。
また、フィナステリドの成分は錠剤を接触した皮膚から体内へ吸収されるため、服用どころか接触することさえ厳禁です。
2つめは服用中に献血してはいけないという点です。提供した男女問わず輸血されます。1つめの注意点でも触れましたが、女性にフィナステリドが含まれた血液が入るのは避けなければなりません。
3つめは錠剤の扱い方法です。プロペシアの錠剤を分割、粉砕すると飛沫でも体内に吸収されるといわれています。そのため1で注意したように妊婦や授乳中の婦人、妊娠可能性のある婦人の前では取り扱いに注意しましょう。
プロペシアの注意点について詳しくは、以下の2つ記事をご覧ください。
ジェネリックについて
特許期限が過ぎた医薬品を再開発したものは、ジェネリックと呼ばれています。ジェネリックのメリットは、同じ成分の先発医薬品よりも安価であることです。成分はプロペシアと同じフィナステリドであり、効果も同じです。
プロペシアのジェネリックは「ファイザー」と「サワイ」が有名です。他にもありますが、詳しくは以下の記事に掲載されています。
ザガーロ
ザガーロは5α-リダクターゼの抑制効果を持っています。その点はプロペシアと同じです。
効果
5α-リダクターゼの活性を止め、DHTの活動を抑えるのがザガーロの効果です。プロペシアと違う点は、フィナステリドではなくデュタステリドという成分が活躍する点です。
プロペシアがⅡ型の5α-リダクターゼにしか作用しないのに対し、ザガーロはⅠ型の5α-リダクターゼにも作用することで、効果はプロペシア以上と言われています。
また、プロペシアが発毛効果は少ないと言われるのに対し、ザガーロは発毛にも効果があると言われています。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
副作用
ザガーロはプロペシアよりも勃起機能不全や性欲減退、精液量減少と射精障害のリスクが高いと言われています。また、肝機能障害や女性化乳房の副作用も報告されています。
どれも判断するのが主観的になってしまう点も同じです。副作用に関しては以下の記事をご参照ください。
注意点
ザガーロはプロペシアと同じで、とにかく女性が接触しないように配慮しなければなりません。
そして、もちろん服用期間中に献血するのも禁止です。あなたがそのことを気にしているなら、以下を参照するのをおススメします。
ミノキシジル
プロペシアやザガーロはAGAの進行遅延を目的とした薬ですが、ミノキシジルは発毛効果のある薬です。
一般的なAGA治療ではプロペシア、またはザガーロのどちらかを服用し、効果が乏しい場合は加えてミノキシジルを併用するクリニックもあります
また、育毛サイクルを使い切っている可能性が高い場合は、最初からミノキシジルを使う場合もあります。
効果
ミノキシジルがAGA治療に役立つのは、血管拡張効果があるからです。血管が広がることで、髪の毛の成長に関わる栄養がよく届く環境を作り出せるとも言われています。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
副作用
ミノキシジルは頭部以外に対しても発毛効果があります。そのため、全身の体毛が濃くなる恐れがあるのです。また、本来は血圧を下げる薬のため、低血圧症状や動悸などの循環器症状がでることもあります。
また、服用後に初期脱毛がおこることがあります。初期脱毛と聞くと心配になりますが、初期脱毛があった分髪の毛が生えるともいわれています。
ミノキシジルに関する副作用について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
AGA治療薬の費用
前述したAGAの薬を服用するには出費を伴います。
保険が適用されず全部自己負担
AGAは命に関わる症状ではないため、保険が適用されません。全ての費用を自己負担することになります。
そして、自由診療となるため薬の価格は病院によって自由に決められます。基本的に薬の効果に大きな違いはありませんので、価格を比較することは安く治療を受けるために重要です。
国内承認薬の費用の相場
国内で認められている主なAGAの治療薬は、プロペシア、フィナステリド、ザガーロの3種類です。
プロペシアが7,000円前後、フィナステリドが6,000円前後、ザガーロが10,000円前後に設定されています。
専門クリニックのオリジナル治療薬の費用の相場
AGAを専門に治療するクリニックは数多く存在します。そして、それらのクリニックはオリジナルの治療薬を開発し、処方しています。
オリジナルとは言っても、成分は「プロペシア」「ザガーロ」「ミノキシジル」と同じ薬です。ただし、製薬会社から発売されているものよりも安く処方できるため、患者は費用を抑えて治療を受けられるメリットがあります。
例えば、フィナステリド・ミノキシジル・サプリメントのセットであれば、15000~30000円が相場となっており、クリニックによって大きな開きがあるのが実情です。
効果に大差がないことを考慮するならば、専門クリニック選びは価格を参考にすることが大切だと言えます。
AGA治療薬の入手方法
AGA治療薬の入手方法ですが、医師処方薬であるため病院で処方してもらう以外に入手方法はありません。
ドラッグストアや通販では購入出来ない
AGAの薬は医師処方薬です。医師処方薬はネット通販やドラッグストアで扱っていません。
個人輸入は利用しない
インターネット上には、海外医薬品の個人輸入を代行する業者が存在します。プロペシア等のAGA治療薬も商品として存在します。
しかし、個人輸入代行業者を使ったAGAの治療薬の入手は安全性の確立が保証されていませんのでおすすめしません。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
ミノキシジル外用薬は薬局で購入可能
内服薬ではなく塗るタイプの外用薬であれば、薬局で購入できます。日本国内で販売されているミノキシジル配合の外用薬としては以下の2つがあります。
- 【スカルプD】メディカルミノキ5(アンファー)
- リアップ(大正製薬)
買うならどちらが良いかですが、どちらもミノキシジルを5%配合しており同様の効果が期待できます。
しかし、価格で選ぶならメディカルミノキ5がおすすめです。リアップX5はamazonで¥7,611ですが、メディカルミノキ5は公式サイトで4本まとめ買いをすると1本(1ヶ月分)あたり¥6,750と、年間で1万円以上節約できます。
メディカルミノキ5とリアップX5の違いについて、詳しくは以下のリンクをご覧ください。
AGA治療薬の飲み方
正しく服用することで、AGA治療薬の効果を引き出し、リスクを軽減できます。
フィナステリドは1日1mgが上限
フィナステリドの服用量は、1日1mgがリミットです。リスクを省みず上限を超えても、効果が増すことはありません。
フィナステリドは0.2mgタイプと1.0mgタイプの2種類が販売されていますが、1.0mgタイプを1日1錠服用することが一般的です。
ミノキシジルは1日10mgが上限
ミノキシジルの服用量は、1日10mg以下と決まっています。フィナステリドと同じく、それ以上の服用をしても効果は上がりません。
ミノキシジルの濃度は処方するクリニックによって様々ですが、1錠あたり5mgのものを処方しているところが多いです。
中には体に慣らさせるため、治療開始から最初の1ヶ月は2mgを処方し、2ヶ月目から5mgのものに切り替えるといったクリニックもあります。
濃度が高い方が発毛効果も高いですが、副作用のリスクも高まります。
1日1回、毎日同じ時間帯に飲む
フィナステリドは毎日決まった時間に飲むことで、体内のフィナステリドの効果を体内で保つことができます。
ザガーロはフィナステリドよりも薬が体内に残る時間が長いため、多少時間がずれても大丈夫です。
ミノキシジルに関しては5mgを朝と夜の2回に分けて飲む方が優れた効果を期待できます。
ただし、多くのクリニックは1ヶ月分の処方として5mgを30錠で処方しています。1日2錠服用すると半月分となり、ミノキシジルの費用が2倍になります。
お酒と一緒に服用しない
お酒は血管を拡張させてしまうため、拡張効果のあるミノキシジルとの併用は厳禁です。詳しくは以下の記事をご参照下さい。
飲んだかどうかわからない時は飲まない
薬は多く飲み過ぎると副作用が心配なので、飲んだか忘れてしまった時には服用すべきではありません。
用法用量を守って服用する
医師の説明に従い、用法用量の厳守が重要です。体調不良を感じた時は直ちに服用を中止し、医師に相談して下さい。
服用する時間
治療薬によって服用のタイミングは異なります。詳しくは以下の記事をご覧ください。
併用禁忌
AGAの治療薬と、他の薬の相性が悪いこともあります。下の記事を参考にしてみてください。
また、内服開始の前に薬を処方されている主治医に飲み合わせなどについて相談しましょう。
AGA治療薬の濃度について
AGAの治療薬に含まれている成分の量によって効果に違いが出ます。
プロペシア(フィナステリド)の濃度は0.2mgと1mgの2種類
プロペシアには、0.2mgと1mgの2種類のタイプがあります。一般的には1mgを使用します。
ミノキシジルはクリニックによって異なる
発毛効果のあるミノキシジルは、処方する専門クリニックによって差があります。1日5mgという方針の専門クリニックが多いですが、2mgから少しずつ増やしていくという方針を採用するところもあります。
市販の外用薬はミノキシジル5%
市販の塗り薬タイプのミノキシジルは、成分量が抑えられています。例えば、リアップは含有量が5%です。ですが、クリニックによっては、ミノキシジルの含有量が市販薬より多く、より大きな効果が期待できる外用薬を処方するところもあります。
服用中の子作りについて
AGAの薬を服用する時、子作りに関しては賛否両論です。
赤ちゃんへ影響する可能性は少ない
服用しているAGAの薬が性行為によって生まれる新しい命に影響を与える可能性は少なく、基本的に服用者だけと言われています。ですが、1ヶ月は避妊するよう推奨しているクリニックもあります。
精液への移行量はごく僅か
赤ちゃんに影響する可能性が少ないのは、AGAの薬は精液にほとんど関わらないからです。臨床試験を通じて、その点は確認されています。
妊婦や授乳中の女性は触れることも厳禁
AGAの薬が与える影響は、赤ちゃんに波及することは基本的にありません。ですが、パートナーや周囲の女性などには注意しなければなりません。
皮膚から吸収する性質があるため、妊婦や授乳中の女性が薬へ触れないように配慮する必要があります。そのリスクの詳しいことは以下を参照して下さい。
服用中の献血について
AGAの薬の服用者は、献血行為に対して慎重にならなければなりません。
プロペシア、ザガーロの服用中は献血禁止
献血した血液は男女問わず供給されます。プロペシアの成分であるフィナステリドと、ザガーロの成分であるデュタステリドが含まれている血液は、妊婦や授乳中の女性にとっては大敵です。
彼女達に問題が起こらないように、プロペシアとザガーロの服用中は献血をしてはいけません。
服用をやめてから一定期間が経過すれば献血できる
AGAの薬を服用したら一生献血できない、というわけではありません。例えば、プロペシアは1ヵ月、ザガーロは6ヵ月の休薬期間を設ければ献血を解禁できます。詳細は以下のサイトをご覧下さい。
まとめ
以上の様に、AGAの薬と一言で言っても、様々なことに気を配る必要があります。AGAに効果があるからと知識がないまま治療を始めても、AGAが改善されないどころか、周りに悪影響を与える恐れさえあるのです。
AGAの治療を始める前、また既に治療している方も薬の知識を備えておきましょう。
石水 朋哉
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